フリーランス美容師は料金設定も自由?薄利多売は負のループ

自由な働き方として、近年広がっているフリーランス美容師。主な働き方として「面貸し」と「業務委託」があります。それぞれの働き方によって、料金設定は変化するのでしょうか?

業務委託で働く場合はお店の値段に合わせる必要あり

「業務委託」とは、美容室が集客したお客様の、髪を切ること(業務)を専門に依頼して託す(委託)ことです。主に、売上に対する報酬を受け取る形です。「業務委託」の場合、集客は美容室がするため、美容室が設定した値段を用います。

 

面貸しの場合は値段の設定が可能

「面貸し」とは、美容室(シェアサロンを含む)から自分が集客したお客様の髪を切る場所(セット面)を借りることです。主に、売上に対するロイヤリティ(地代や光熱費諸々の代金)を差し引かれた額が収入になります。

「面貸し」の場合、自分で集客するため、自分が設定した料金を用いることができます。

 

カット料金は美容師としての価値

カット料金の設定に重要になるのが、「自己ブランディング」です。『自分がどの層にウケる美容師なのか』『自分のカットにどんな価値があるのか』『美容師として、どうありたいのか』。

筆者自身、美容師として、自分の価値を考え悩むことは今もあります。なぜならカット料金には経費はかからず、そのまま「美容師としての価値」に直結するからです。

 

料金設定の掟

競争から「安売り」に走る美容室は多くあります。「安い」ことの集客力は、言うまでもなく圧倒的です。ですが安くなればなるほど、現場の仕事量は増えます。「高価格帯の美容室」の2倍の仕事量をしないと売上は同じになりません。

お客様は料金が安くかったとしてもサービスの「上質」さを求めています。特に昨今の消費傾向は、「上質」さに対しての対価を惜しまない形に変化しています。

しかし、安価にするほど、他の「誰でもいい美容師のカット」として選ばれ、「自分のカット」の価値は下がり、自己ブランディングを確立できません。この両立がとても難しく、悩みを抱えている美容師も少なくありません。

 

薄利多売するのは負のループ

「安売り」による売上は、数をこなさなければ成立しません。例えば、牛丼チェーンは「牛丼」を“作り置き”することで「上質」を維持しながら効率を上げられるため、『安くて美味い』を実現しています。

ですが美容師の場合、「カット」は“作り置き”できず、その場で“調理”しなければなりません。そして時間に追われながらの「カット」は、“調理”にかける時間を削いでいるだけになり、質が低下します。

つまり「牛丼」の『安くて美味い』を、「カットの安売り」はどちらも実現できないのです。そして『安い』カットへの信頼は下がり続ける上に、『美味い』と喜ばれる信頼も獲得することができません。

そのため「安売りのカット」は、顧客を獲得できない「負のループ」に陥ってしまいます。

 

安い=喜ばれる、は幻想

美容師のみならず、接客業で現場に立つ方は、「安い」ことが「サービス」である、と「安売り」を美化してしまいがちです。

ですが、サービスのつもりの「安売り」は身を切るだけの結果を招きます。「牛丼を提供する」サービスと、「ヘアスタイルを切ってもらう」サービスとは、求められる要素が違うのです。「低価格帯の美容室」は安かろう悪かろうのハードルを“お客様側が”下げているため、「妥協」を提供していることになります。

 

お客様とwin-winの関係性を築くべし

お客様の「満足度」は「髪を切ってもらう」というサービスだけでは測られていません。満足度を高める要素としては、ヘアスタイルを切ってもらうという以外にも、お客様とのコミュニケーションの中にある「居心地の良い時間」や「情報交換」などが挙げられます。これは美容師にとって、大事な付加価値です。

満足度高くお客様にサービスをもたらすために大切なのは、ビジネスとして等価交換出来ることです。お客様への「満足度」と自分に返ってくる「対価」が真っ当であれば、どちらにとってもwin-winなのです。

お客様の「満足度」は、SNS上のインフルエンサーが行う「ファン経済」に近いです。お気に入りの美容師さんからもらう「居心地の良い時間」や「情報交換」に、お客様は「対価」で応援してくれます。

沢山のお客様から「指名」されることは、「応援されている」ことと同じなのです。

 

「お客様との良好な関係」が美容師の価値

「自分=商品」の適正価格がいくらなのか、そして「どうありたいのか」は、終わりのない課題です。ですが、それはお客様に「応援される」ことで報われ、「またそれに応えよう!」という力になります。

カットの値段は、美容師とお客様との良好な関係を築くための、大切な要素です。「安さ」ではない価値を見出せるようにしましょう。